
パニック障害の人が就職や転職で仕事を探すのは一般的には難しいと言われます。
それは、パニック障害の特性の出方がひとり一人に違いがあり、それにプラスして個性やキャリアやスキルなど個人の条件がプラスされるからです。
そうなると、個人に特定して仕事を探すのは非常に難しくなります。
しかし、ここをいい加減に仕事を決めると、どこに就職や転職しても成功はしません。
退職に繋がるでしょう。
また、パニック障害も再発したり、悪ければ進行して他のメンタル障害が併発することも考えられます。
そうならないためには、自分にぴったり合っている仕事を見つける必要があります。
そこで、ここではパニック障害のひとり一人に合っている仕事を見つける為に、障害特性を再確認したうえで仕事の探し方を解説します。
パニック障害で休職をしている人や、仕事を探している人の参考になるように一番良い方法をまとめたので、最後までお読みください。
パニック障害とは
パニック障害は、突然の激しい動悸や、額に冷や汗が出て胸を駆け巡る強い不安感が生じるパニック発作が起こります。
このパニック発作が、何度も起こることで「また発作が起こるかもしれない」と言う、『予期不安』を起こすようになります。
また、一度発作が出た場所に恐怖心を持ち、そこを避けるようになる『広場恐怖症』も感じるようになります。
このようなことが続き、日常の生活に支障を来すようになるのが、パニック障害です。
パニック障害の具体的な症状
パニック障害の具体的な症状は、パニック発作と予期不安と広場恐怖症に分かれます。
パニック発作
パニック発作の現れ方は、人により差はありますが、以下のようなことがあげられます。
DSM-5
- 動機、心悸亢進、または心拍数の増加
- 発汗
- 身震いまたは振え
- 息切れ感または息苦しさ
- 窒息感
- 胸痛または胸部の不快感
- 嘔気または腹部の不快感
- めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
- 寒気または熱感
- 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
- 現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
- 抑制力を失うまたは“どうかなってしまう”ことに対する恐怖
- 死ぬことに対する恐怖
引用元: wikipedia
予期不安
予期不安は、パニック発作を経験して恐ろしいと心にインプットされることで、また発作が起きるのではないかと言う不安を生じます。
その原因であるパニック発作が起きるたびに、予期不安を強く感じるようになり症状が悪化していきます。
広場恐怖症
広場恐怖症は、字の意味をストレートに取ると少し違います。
これは、広い場所では無くパニック発作を起こした経験から、ある一定の場所を避ける予期不安の延長です。
例えば、駅のホームでパニック発作が出た人が電車に乗れなくなる等が、広場恐怖症になります。
また、パニック発作が起きても助けてもらえない、逃げられないと思い込んだ場所も、広場恐怖症になります。
例えば、人気の少ない長い地下道や、乗車距離の長い公共機関などになります。
パニック障害の原因
パニック障害は原因はハッキリわかっていませんが、脳の誤作動とも言われています。
通常、命に関わる災害や事故、事件などに巻き込まれた場合、大声を出してその場から逃げたいと思うのは、普通の反応で人間本来の本能です。
ですが、何のトラブルも無いところで、この反応が出てしまうのがパニック発作で、心の状態に起因すると言われていることの他に、脳神経の機能にエラーがあるとも言われています。
統計では、100人に1人がかかるとも言われ、男性と女性を比べると女性の方がパニック障害になりやすく、仕事や生活習慣の乱れによるストレスなどが、パニック発作の起因とされています。
また、パニック障害が6ヶ月を超えて症状が軽減しない場合は他のメンタル障害か、併発が考えられます。
パニック障害の仕事
パニック障害は、パニック発作と予期不安と広場恐怖症に配慮した仕事と環境が必要です。
障害特性に合わせて向いている仕事と向いていない仕事例を解説します。
障害特性上向いていない仕事
- 建設業
- 製造ライン業
- 接客業
これらは、パニック障害の人には向いていません。
この職業は、場所と時間に縛られるので、パニック障害の特性である予期不安が出やすいと考えられます。
- いつでも逃げることが出来ない
- 助けを呼びにくい
これらのことが、原因になりやすいです。
また、一度でもパニック発作が職場で出てしまうと、広場恐怖症の対象となります。
障害特性上向いている仕事
- 事務アシスタント
- 軽作業(庶務・メール室)
- 清掃
- 在宅勤務
- 在宅ワーク
これらは、パニック障害の人に比較的向いている仕事といえます。
事務アシスタント、軽作業、清掃は通勤が出来れば、社内では比較的に自由に動けます。
万が一、パニック発作が起きても企業であれば、産業医や保健師が常駐しているところが多いので、安心できるでしょう。
また、休養を取れるベッドを用意してある企業も多く存在します。
予期不安が無ければ、広場恐怖症も軽減されます。
在宅勤務と在宅ワークに関しては、どちらも自宅でできるので一番安心ではないでしょうか。
しかし、この向いていない向いているだけで仕事を決めるのは、おすすめしません。
なぜならば、人には個性があり、パフォーマンスもキャリアやスキルも全く違います。
それを、障害特性だけで決めるのは少し無謀です。
仕事を決める時は、そういったバックグラウンドと障害の両方を考えられる第3者の客観的な意見が必要です。
パニック障害と診断され、6ヶ月経過しても改善されない場合は、うつ病など他の診断が出る可能性がります。
そうした場合、精神障害者保健福祉手帳の取得が可能です。医師に相談をしてみましょう。
精神障害者保健福祉手帳があると、障害への合理的配慮が有る環境で仕事をすることが出来ます。
合理的配慮(ごうりてきはいりょ)とは、障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な便宜のことである。
引用元: wikipedia
パニック障害の人が仕事を見つけ就職や転職をする6つの方法
パニック障害の人が就職や転職で、自分にぴったり合った仕事を見つける為のおすすめの方法を、2つのタイプ6つの方法に分けて解説します。
タイプ1:仕事をする準備が出来てる人
タイプ2:仕事をする準備が必要な人
1-仕事をする準備が出来ている人
『仕事をする準備が出来ている人』とは、退職して療養をしている人で、医師の診断で治療を続けながら仕事をしても良いとされた人や、現職があり休職して療養をしている人で自分に合っている仕事と環境に転職を考えている人です。現在、就業中の方で転職を考えている人も含まれます。
1-1ハローワーク
障害のある人用に、配慮のある求人を探す事が出来ます。相談員もいるので解らないところは相談や質問が出来ます。
求人への質問は、相談員から企業へ問い合わせも可能です。
この障害のある人の求人には、合理的配慮のある仕事がありますが、それを利用するのには精神障害者福祉手帳が必要です。
一般の求人の方が条件が良く数も多いので、パニック障害を隠して仕事を探す事も出来ますが、働きやすい環境で長く務める事を考えると、あまりおすすめしません。
医師に相談して、手帳の取得を検討することをおすすめします。
1-2求人サイト
求人サイトは、一般枠と障害枠と取り扱っているサイトが違います。
パニック障害が心配で、合理的配慮のある仕事を探すのであれば、障害枠の求人を探す方が良いです。
しかし、採用されるのには、精神障害者福祉手帳が必要です。
1-3人材紹介会社
人材紹介会社は、企業に依頼されたプロです。
採用条件にマッチする人材を紹介して報酬を得ています。
これも、一般枠と障害枠とあり、パニック障害が心配な人は障害枠の人材紹介会社を利用するのが良いでしょう。
障害枠の人材紹介会社の利用には、必ず精神障害者福祉手帳は必要ありません。
取得予定で利用が出来ます。
ただし、就職や転職する企業が決まり、入社するまでには精神障害者福祉手帳の取得が必要になります。
2-仕事をする準備が必要な人
準備が必要な人とは、パニック障害のパニック発作から予期不安や広場恐怖症の恐れがあり就職や転職が進まない人のことです。
この場合、医師からは改善されて仕事が出来ると診断された人と、治療がまだ必要な人や他のメンタル障害と診断され精神障害者福祉手帳を取得している人が対象です。
要は、パニック障害が原因で手帳がある人も無い人も、仕事をするのに不安がある人が利用できます。
2-1就労継続支援A型
企業で募集する採用条件では就職が困難ですが、雇用契約が結べて仕事が出来る人に、一般企業で働けるように仕事の訓練の場を作り支援します。
利用には、各市区町村で発行する受給者証か、通院している証明が必要になります。
詳しくは、各自治体の福祉課に問い合わせてください。
2-2就労継続支援B型
一般企業で募集する採用条件では就職が困難で、就労継続支援A型でも雇用契約が難しい人に、仕事の訓練の場を作り支援します。
利用には、各市区町村で発行する受給者証か、通院している証明が必要になります。
詳しくは、各自治体の福祉課に問い合わせてください。
2-3就労移行支援
就労移行支援は、一般企業に就職をするための準備が出来ます。
期間は、最長2年で場合によっては延長も可能です。
利用には、各市区町村で発行する受給者証か、医師の判断が必要になります。
パニック障害の一般就労におすすめの方法
パニック障害の人が就職や転職で利用できる方法はいくつかありますが、ここでは一番おすすめの方法を紹介します。
仕事をする準備が出来ている人向け
まず、仕事をする準備が出来ている人は、自分にぴったり合っている仕事を紹介できる『人材紹介会社』がおすすめです。
ハローワークや求人サイトでは、自分で探すので客観的な目で選ぶことは難しいでしょう。
また、人材紹介会社は多くの企業の採用情報があるので、カウンセリングを受けるだけで、ひとり一人にぴったり合った求人の提案を受けることができます。
仕事の準備が必要な人向け
パニック障害への不安や、他のメンタル障害が併発した人で、まだ仕事を始めるのに準備が必要な人は『就労移行支援』がおすすめです。
自治体か医師が必要と判断すれば利用が出来るので、比較的に利用はしやすい条件です。
無理に焦って仕事を探すより少しでも不安がある人は、就労移行支援で自信をつけてから人材紹介会社を利用するのが一番効果的です。
人材紹介会社とは
人材紹介会社が、パニック障害の人の仕事を探すのに一番良い方法ですが、何が出来るのか解説します。
出来ることは大きく別けて3つになります。
- カウンセリング
- 仕事の紹介
- 定着支援
特に、仕事の紹介では求人を出している企業の仕事内容だけで無く、合理的配慮のある環境まで解るので、障害に合わせたひとり一人にぴったりな提案が出来ます。
カウンセリング
パニック障害と一口で言っても、特性の出方はひとり一人違いがあります。
また、必要な配慮もそれによって変わります。
その他に、育った環境やパフォーマンス、キャリア、スキルなど全てを通して一人の個性を見いだします。
それが出来るのが、腕の良いカウンセラーです。
これが基になって、ひとり一人にあっている求人を提案します。
仕事の紹介
仕事を個人で探せば、良いなと思える求人は1日で数件、良くて10数件でしょう。
それも、何10社の求人も見てです。
ですが、人材紹介会社は何千件という求人数の中から、ハローワークやweb媒体では解らない詳細条件や採用実績まで即解ります。
その中から、カウンセリングで得た情報と照らし合わせて提案が出来るので、一番良い組み合わせの提案が可能です。
定着支援
仕事を紹介して終わりではありません。
紹介した企業に入社した後も、条件が違わないか、困っている事は無いかと連絡が来ます。
もし、そこで困っている事があれば、慎重に誠意を持って解決をし、万が一退職になった場合は、手続きや次の転職先まで力になってくれます。
就労移行支援とは
就労移行支援は、仕事を始めるのにまだ準備が必要な人が利用するのにおすすめですが、ここでは何が出来るのか解説します。
就労移行支援の出来ることは3つあります。
- トレーニング
- 就活支援
- 定着支援
トレーニング内容
トレーニングは、ひとり一人に合わせてカリキュラムを作ります。
Excelなどのパソコンスキルや、ホウレンソウなどの基本的なビジネスマナーなど仕事に必要なスキルから、自分で体調を管理する方法やコミュニケーションの取り方などまで、社会人として仕事をするのに必要な基本をトレーニングします。
就活支援
就活支援は、企業で行うインターンの応募や、興味のある業界の企業研究などに最新の情報を提供し、必要であればインターン実施を企業に提案します。
また、積極的に企業を招待した見学会を開き、就労移行支援に通所している人たちのPRに務めます。
定着支援
入社後は、今までも6ヶ月の定着支援として定期的な面談を本人と上司と行っていますが、2018年4月からは新しく別に就労定着支援の制度が出来て最長3年利用が出来ます。
パニック障害が心配でも、定期的に就労移行支援のスタッフが面談で状況を確認するので、必要に応じて上司に話をして改善できるような環境を維持します。
まとめ
パニック障害の人が就職や転職で仕事を探す一番良い方法を解説しました。
仕事が出来る準備が出来ている人は、『人財紹介会社』を利用すると自分に一番合っている仕事を早く見つけることが出来ます。
仕事をするのに不安があり準備が必要な人は、『就労移行支援』から始めるのが良いでしょう。
ただし、就労移行支援は準備は出来ても仕事を紹介していない所もあるので、最終的には人材紹介会社の利用を考えておく事をおすすめします。
また、人材紹介会社も就労移行支援も数多くあります。
焦っていい加減に決めないように、しっかり見学や話を聞いてから利用をするところを決めましょう。