障害者は、合理的配慮のある環境で就業することが障害を考えると一番良いのですが、給料が安いと言われています。
そこで、心配なのが「障害者雇用枠の安い給料では生活できない」と言う事です。
家族がいる人も、自立して一人暮らしの人も、給料が安くては生活できないです。
そこで、今回は、障害者雇用枠の「給料が安い理由」と「生活できない」を解決する方法を解説します。
こんにちはアドバイザーKです。
当メディアの無料個別相談と資料ダウンロードの時にお願いしているアンケートで「障害者雇用枠では生活できないのか実態調査」をしました。
そのデータと「障害者雇用枠の給料では生活できない」と言う人と「できる」と言う人の生の声の一部を掲載するので、そちらも参考にしてください。
障害者雇用枠の給料で生活できない理由
障害者雇用枠では生活できないを解消する支援と方法を解説する前に、障害者雇用枠の給料が何故安いのか、その理由を知っておいてください。
理由は、6つ有ります。
- 雇用形態
- 労働時間が短い
- 業務内容
- 残業0
- 地域最低賃金
- 統計方法
障害者雇用枠の雇用形態が原因
まず、障害者雇用枠の給料で生活できない理由の1つとして雇用形態があげられます。障害者雇用枠とは、企業や自治体が障害者が働きやすいように合理的配慮をした採用枠の中の1つです。
一般枠との違いは、採用基準や雇用形態、就業時間、仕事内容、給料などが変わってきます。
障害者の雇用形態は、正規の「正社員」と非正規の「契約社員」「派遣」に別れます。
それぞれの違いは、「正社員」は雇用期間の制限無し、「契約社員」は雇用期間の制限あり、「派遣」は直接雇用契約無し派遣会社の雇用になります。
契約社員には、嘱託、無期・有期契約社員、パートやアルバイトなど非正規雇用の社員全てが含まれます。
多くの障害者雇用枠の契約社員はボーナスがなく、それが一般枠の正社員より年収が低くなる原因になっています。
厚生労働省発表(2019年)の雇用形態の割合は、次の様になります。
正社員49.3%、契約社員50.3%、無回答0.4%です。
以外と正社員が多いように思われるかもしれませんが、特例子会社(令和2年544社)のフルタイムとパートタイムの正社員雇用率が95.9%あるからで、実態は9割がボーナスやインセンティブの無い一般事務や軽作業の契約社員です。
一般企業と自治体だけの集計データが無いのでハッキリ解りませんが、私が在籍している企業から算出すると障害者雇用枠の契約社員は9割強です。
労働時間が短い
障害者は体調や障害への配慮からフルタイムでは無く、時短勤務で就業できます。
時短勤務は月給では無く時間で換算されるので、働く時間が短い分給料も低くなります。
労働時間 | 一般労働との差 | |
---|---|---|
一般労働 | 166.5h | 0h |
身体障害 | 149.7h | -16.8h |
知的障害 | 139.4h | -27.1h |
精神障害 | 138.6h | -27.9h |
発達障害 | 146.6h | -19.9h |
また、一般労働にはある残業が障害者枠では配慮として無いことが多いので更に差がでます。
業務内容
会社員の給料は、仕事の内容で変わります。
障害者の場合、アシスタントや軽作業が多くて責任は軽く給料も安いです。
残業0
多くの企業で働く一般社員は残業ゼロは難しく、36協定の中で調整しています。
障害者の場合、合理的配慮という理由で極力残業はありません。
一般社員は基本給が高く残業代がプラスされますが、障害者枠は基本給が低く残業代がありません。
地域最低賃金
障害者も最低賃金が適用されますが、地域によって最低賃金が違います。
東京の最低賃金が、1,013円で、沖縄が792円です。
(2020年10月1日厚生労働省)
また、障害者雇用枠の契約社員の給料は各都道府県の最低賃金をベースにしている企業が多いので地域によっても給料の低さは変わります。
統計方法
これは、統計の出し方です。
全ての障害者が安い給料ではありません。
中には、高額な給料を貰っている障害者もいます。
ですが、厚生労働省の統計では全ての障害者の給料の平均なので、1日2時間のパート、アルバイトや、嘱託職員の給料も一緒にした平均なので低く見えています。
障害者雇用枠の安い給料で生活できない現実
厚生労働省発表の(2019年6月)データから障害者雇用枠の給料の平均を抽出しました。
障害者雇用全体の給料の平均は146,000円です。
障害ごとの給料の平均になります。
- 身体障害者平均215,000円
- 知的障害者平均117,000円
- 精神障害者平均125,000円
- 発達障害者平均127,000円
次に、総務省発表の生活費です。
総務省発表の(2019年)家計調査で一人暮らしの生活費の平均額は181,784円で、2人以上の世帯は1世帯当たりの生活費は平均276,671円でした。
これを障害者雇用枠の給料と比べると、一人暮らしの身体障害者(215,000円)がぎりぎり生活が出来るくらいです。
この結果から、障害者雇用枠では生活できないと言う実態が解りました。
データだけを見ると確かに生活できませんが、解決する支援や方法はあります。
それを、このあとの「障害者雇用枠では生活できないを解消する支援と方法」で解説していきます。
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【障害者収入白書】給料と年収徹底調査!1000万円高収入は可能?
障害者雇用枠では生活できないを解決する支援と方法
障害者雇用枠の給料では、生活できない人や少しでも生活を楽にしたい人への支援や方法があるので紹介します。
支援と制度の利用
まず、5つの公的支援と制度です。
- 障害年金
- 生活保護
- 特別障害者手当
- 障害者控除
- 障害者就業支援センター(なかぽつ)
障害年金
障害年金は、一定の条件に当てはまる方が受給できます。
加入している年金によって変わり、国民年金は「障害基礎年金」で、厚生年金は「障害厚生年金」が加算されます。
障害基礎年金
年金加入者は障害基礎年金の1級と2級の受給申請ができます。
障害厚生年金
厚生年金に加入している間に、障害者になった1級、2級の人は障害基礎年金に上乗せして受給の申請が出来ます。また、3級の人も申請が出来ます。
その他、3級に満たない方も初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには障害手当金(一時金)が支給されます。
条件
- 国民・厚生・救済年金に加入している間に初診日があること
- 公的年金の加入期間の2/3以上の保険料が支払い済みであること
- 初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
*障害者手帳に書かれている級とは違います。
出典:日本年金機構
障害年金は受給するまでに時間が掛かったり、書類不備で申請を却下されることも多いので、お近くの社労士に相談をされると良いです。
社労士によって、手付け金有り無しがあるので、よく確認をする様にしましょう。
生活保護
生活保護は、障害に関係なく経済的に困っている人に自治体が支援をします。各自治体の生活保護を担当している課に受給が可能か相談をしてください。
特別障害者手当
身体障害者・精神障害者・発達障害者が重度の障害で、日常生活で常時特別な介護が必要な人に支給されます。
- 申請:お住まいの市区町村の役所
- 年4回の支給:5月8月11月2月
- 支給額:26,940円/1月
障害者控除
障害者の収入によって税の負担を軽減します。
対象は、家計が同じ家族です。
所得税 | 住民税 | |
---|---|---|
障害者 | 27万円 | 26万円 |
特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
*特別障害は重度の障害の方です。
*同居特別障害は、重度で配偶者や扶養親族と同居している方です。
軽減される税は所得税や住民税、相続税などです。
相談はお住まいの市区町の自治体に御相談ください。
障害者就業支援センター(なかぽつ)
障害者就業・生活支援センターとは、障害者の生活と仕事を総合的に相談が出来る機関で、国と都道府県から事業を委託された法人が運営しています。
現在は、全国に336設置されています。
障害者は、生活や仕事だけでなく困ったら何でも相談が出来ます。
ネットで障害者就業・生活支援センター+○○県で検索すると閲覧できます。
通称「なかぼつ」について
障害者就業・生活支援センターが「なかぽつ」と言われる理由は、障害者就業と生活支援センターの間に・があるので「なかぽつ」です。
副業
障害者雇用枠の給料だけでは生活が出来ない時、収入を増やすのには副業が手っ取り早いです。
ただし、しっかり選ばないと無理から体調管理が出来なくなり本業までダメになります。
時間や収入など目的を明確にして選ぶ事がコツです。
当メディアの副業の記事を参考にしてみてください。
人財紹介の利用
障害者雇用枠の給料が安くて生活できない場合、根本的に変えるのには条件の良い仕事に転職する必要があります。
ただし、むやみに転職をしても失敗したらまた生活できません。まずは、転職の目的を絞って探してみましょう。
障害者の転職総合案内です。参考にしてみてください。
【総合案内】7つの障がい者におすすめの転職エージェント&求人サイト >
生活できないを改善するホワイト企業はこちらを参考にしてみてください。
【ホワイト企業TOP100】障がい者におすすめの働き方 >
風通しの良い社風の外資系企業はこちらを参考にどうぞ。
外資系企業の障害者雇用枠の求人の解説と転職成功の方法 >
働きやすい特例子会社はこちらを参考にどうぞ。
【特集】特例子会社に就職!徹底解説ここを読めば全て解る >
就労移行支援の利用
安定して仕事を続けられないとか、障害者として再就職を考えている人で、まず働く事に不安がある人は、働く準備からスタートする方が良いでしょう。
就労移行支援は殆どの人が2年間無料で利用が出来ます。生活保護を受給しながら就労移行支援で準備を整えられると良いスタートが切れます。詳しくは【就労移行支援おすすめランキング10選】あなたにピッタリが見つかる >をご覧ください。
就職に有利な情報も入手できますよ。
最後に
如何でしたでしょうか。障害者雇用枠では生活できない理由と実態と解決方法を解説しました。
全ての障害者雇用枠の給料が少ない訳ではありませんが、一般枠と比べると基本給が安く労働時間が短くて生活できないかぎりぎりの場合があります。
これでは、障害を隠して一般枠で働く方が良いと考える人もいるでしょう。でも、長い目で見るとあなたに合っている環境で長く働ける方が安定して健康で幸せな時間をおくれるメリットがあります。給料が良くても体調が悪くなるのでは、長く続かないですからね。
でも、お金がなくて生活できないのは困ります。なので、障害者雇用枠で働く事を選んだあなたは、ここで紹介した支援を最大限に活用して下さい。
私は、思い切って根本的に環境を変えるように転職をするのも良いと思います。
同じ職種でも企業によって給料が違いますし、障害者の給料が上がるタイミングは転職が一番多いからです。
生活が出来ないと悩んでいる人は、まずは今出ている求人の給料の確認だけでもしてみると良いですよ。こちらの記事で障害や年代、地域別にサービスを探すことが出来ます。是非参考にしてみてください。
【総合案内】7つの障がい者におすすめの転職エージェント&求人サイト >
今回の記事は、ここまでです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
当メディアは、1人でも多くの障害者が安心安定した生活が送れることを応援します。最後にアンケートのコメントに一部を抜粋してあります。こちらも参考にどうぞ。
『障害者雇用枠で働く人のアンケート』
当メディアの無料個別相談を利用した方と書類のフォーマットをダウンロードする時にお願いしているアンケートから有効なコメントだけ抜粋しました。
障害者雇用枠では生活できない生の声
- 私の会社では、ランチに障害者が集まって食事をする事があります。
そこで話題になるのが給料です。
全員の正確な給料は解りませんが、大体みんな同じくらいで17~18万円前後のようです。
悪くは無いですが、良くもありません。
家族と同居なら良いですが、自立した生活を考えると生活できないですね。
精神障害 20代 女性もっと見る - 結婚しているのですが、妻のパートと障害年金を合わせても4人家族では生活がギリギリです。
これから子供が進学していきますが、奨学金に頼るしか有りません。
これでは、生活できないとしか言えません。
身体障害 40代 男性時短で週30時間未満で働いています。
障害年金を受給出来ているので何とか生活できていますが、無ければ生活できません。
蓄えも出来ないので、生活が不安です。
身体障害 30代 男性聴覚障害で転職を繰り返していますが、どこの会社も給料は安いです。
30代男性で20万円前後では、やっていけません。
配慮のある職場ですが、給料への配慮はいらないな。
身体障害 30代 男性残業は無く定時で帰れるのは嬉しいのですが、給料が低くて生活できません。たまには、残業も出来ると言っていますが、残業をしようとすると帰るようにうるさく言われます。
給料は安いし、残業も出来ないので副業を会社に内緒で始めました。
発達障害 20代 女性私は、てんかんなのですが発作が出なければ健康体と変わりません。
薬や体調管理で発作もしばらく出ていないのですが、障害者雇用枠で仕事をしているので残業は無くシフトも昼間のみです。
基本給が安いので困っています。
精神障害 30代 男性障害者でもハイキャリアの人はいます。その人は給料が高いので生活はこまりませんが、ある日突然障害者になったキャリアも学歴も無い僕は、とても生活できるような給料も無く、暇な仕事しか有りません。
人生計画なんてとても立てられません。
身体障害 20代 男性私は、障害者同士で結婚をしました。
子供はいません。
2人とも障害者雇用枠で仕事をしています。
私は時短で週30時間未満です。
パートナーはフルタイムです。
今は何とか生活が出来ていますが、今後のことを考えると転職をしないと難しそうです。
精神障害 30代 女性
障害者雇用枠でも生活できる生の声
- 障害者雇用枠で10年で3回転職しました。
最初は、経理のアシスタントとしてスタートしました。
転職するたびに経験のある経理を希望して転職しました。
スタートした時は、時短勤務で給料は13万円前後でした。
フルタイムにして少し給料が上がり、その後2回の転職で今は28万円前後になりました。
給料が安いと転職したくなりますが、同じ仕事を続けるのが良いです。
精神障害 30代 女性もっと見る - 私は、一昨年交通事故の怪我で障害が残り、障害者として働く事を決めましたが、会社に相談したところ同じ部署で同じ仕事に残ることになりました。部署が変わるのかと思っていましたが、そのままで良かったです。給料も変わりません。
企業によって考え方は違いがあると思いますが、理解がある企業を選ばないと、待っていても待遇は変わらないと思います。
身体障害 30代 男性