黒板に書かれたFact

企業が障害者雇用をするときに利用する転職エージェント。
障害者が転職する時にも利用する転職エージェント。

採用する側も、される側も障害者雇用には、今や転職エージェントはなくてはならなくなってきていますが、便利だといって、何も知らないで利用するのは障害者にとって少々危険です。
しっかりと実態を理解して利用しましょう。

今回ここでは、障害のある現役の人事採用担当者が、どちら側からでも利用した経験から解説をしていきます。

企業から見た転職エージェント

求人をする企業、求職者、人材紹介会社、このバランスで考えた時、どこにもメリットがあるようですが、本当そうでしょうか。

まず、求人する企業側から考えてみます。
採用で一番大事になるのは母集団形成です。各方面のメディアを使い宣伝するのは効果がありますが、応募者はランダムになると選考が大変です。しっかりと採用ターゲットを絞った採用計画が必要になります。

また、各メディアにかかるコストや選考コストもあります。手を広げるだけ大変になります。

実際に障害者雇用にだけ、しっかりと別に取り組むべきなのですが、そのことに費やすことが出来る時間も人財も余裕がある企業だけではありません。障害者を採用するのに詳しい人を採用するのも、割に合いません。

そこで利用されるのが、転職エージェントです。
多少コストはかかりますが、転職サイトへの掲載や合同面接会を利用しなければ、かかるコストは採用が決まった時だけです。専門に取り組む人材を採用することを考えると、とても安く障害者の採用が出来るようになります。

あとは企業では、転職エージェントが選んだ障害者を人事で選考していくだけなので、通常の採用とコストでは、ほぼかわりません。
また、転職エージェントは企業への障害者雇用についてもサポートをしてくれるので、特別な知識は最初からなくても、転職エージェントを通じて覚えていくことが出来ます。

転職エージェントから見た企業と障害者

次に、転職エージェントから見た企業はというと、とても美味しいマーケットです。
企業は法定雇用率が国から出ているので、それに沿った障害者を雇用する義務があります。
しかも、障害者者雇用の知識はなく、専門に取り組む人材もなく、新たに、そこへ力を入れていくこともしない企業は、超スペシャルにおいしいマーケットになります。

魚釣りで言えば、入れ食い状態に近いです。

障害者雇用の法定雇用率は、ほっておいてもどんどん上がっていきます。
セールス努力をしなくても条件があえば、右から左にどんどん売れていきます。

また、転職エージェントの商品である障害者は向こうから登録してきます。
ここで、すでに販売ルートが確立されているので、転職エージェントには、とても理にかなった商売と言えるでしょう。

障害者から見た転職エージェント

障害者はというと、自分であちこち仕事を探す必要も無く、転職エージェントに登録しておくだけで新しい情報を用意してくれます。
しかも、1つではなくいくつか用意して頂けるので自分で選べます。
選んだあとは、希望する企業にあわせて採用されやすいように対策をしてくれます。履歴書の書き方から、面接の練習まで行います。これは採用されたい障害者にとって、とても良いサービスになっています。

と、以上を見ると企業も、転職エージェントも、障害者もどこも得で良いことづくめに見えますが、私が採用担当者と障害者として過去に利用して感じていることは別です。

私が障害者雇用に感じた実態

まず、障害者を雇用する企業は、採用者が決まればその人の年俸の30%から35%を手数料として転職エージェントに手数料を支払います。

転職エージェントは、手数料を頂きますが、採用者が退職された場合、企業との契約時の記されている月数により企業に返金します。一律でありませんが入社から半年をめどに80%~15%位の間です。まあ、クーリングオフのような物です。

なので、転職エージェントは半年くらいの間は入社された障害者が退職しないようにフォローをコマ目に行います。自分の所の売り上げに関わるので当然です。

また、転職エージェントは自分の所に登録している障害者が採用されるようにカウンセラーが面接前に企業の好みに対策をしておきます。私たち採用も良く見極めないと猫をかぶっているのか、表面だけ取り繕っているのか分からないほどの時もあります。

そこで、採用後に起きる事はボロが出る時があります。メッキがはがれという方が良いでしょうか。
採用だけを考えると、とても良いサービスでしたが、実態は障害者と企業がお互いに「こんなはずではなかった。」というギャップがでる時があります。

面接時に無理をした対策をした場合、入社後に業務、環境、ビジネスマナーなど、ついて行けないことが起こります。

すると、仕事が苦痛になり、仕事へ行く足も遠のき、悪くすると障害者は退職になります。企業は入社教育から色々と時間とコストをかけた事が水の泡となり、転職エージェントは契約に沿って手数料を返金することになります。

最初はよく見えた構図の実態は見かけだけでした。その中でも一番迷惑がかかるのは、障害者本人達です。

履歴書には新たに短期の就業について記入するようになり、全体の転職回数も増え、今後の転職のマイナス要因となるでしょう。また、中にはメンタル的にダメージを負い、次の転職が中々スタート出来なくなる方もいます。

まとめ

こんな実態を書きましたが、今後も企業と転職エージェントの繋がりは変わらないと思います。低労力と低コストで採用をしたい企業と、そこに旨みを感じている障害者の転職エージェントは、どちらもお互いが必要なんです。

企業と転職エージェントと障害者の関係をしっかり見た時、一番損をしているのは障害者です。
この実態を良く踏まえて障害者は自分で自分を守らないとなりません。

今後も、転職エージェントは障害者にとっても必要であることは間違いありませんが、面接はコーチングされた内容だけではなく、自分の聞きたいことをしっかり聞くようにしましょう。損をするのは自分です。人まかせは良くありません。