障害のある方と企業の面接官の双方に、障害者トライアル雇用の認知度について質問をしたことがありますが、みなさん「名前は知っている」くらいでした。
この制度は障害者も企業にも良く考えられた取り組みです。
ですが、しっかり理解してから進めないと、後で後悔することになる事もあります。
ここでは、トライアル雇用を安心して利用する為に利用する上で知っていてほしい事をまとめました。
-ここでわかること-
- トライアル雇用の仕組み
- メリットとデメリット
- 社会保険と雇用保険
トライアル雇用で働く前に知っておいて欲しいこと
トライアル雇用の情報は、障害者用と事業主用と分かれていて、全容を理解するためには資料がばらばらです。
ぞして、障害者も企業も自分の立場でしか資料を見ていない事が多いので、障害者はトライアル雇用の障害者としての条件だけを見がちです。
ですが、もっと国や企業の障害者トライアル雇用への取り組みについても知ったうえで利用を進めていただきたいと思います。
トライアル雇用制度の全体
まず、トライアル雇用はハローワークから企業への紹介が前提です。そして一定の期間仕事を通して障害者も企業も、お互いを良く理解する時間を作ります。ここがトライアルです。そのトライアル後に「障害者が働きたい」「会社が雇いたい」となったら継続雇用になります。というのが、全体の流れです。
実際に仕事や通勤を通してお互いの様子を見るのがトライアル雇用です。実際に体験ができる訳なので、体力的な事やスキルなど、お互いに心配なところや懸念事項が事前に確認ができ、必要な配慮だったり、補うべきスキルがよく分かり、障害者の就業に前向きな取り組みです。
このトライアル雇用は、厚生労働省のサイトで確認すると、コースは2つとなっていますが、実施は障害者トライアルコースと障害者短時間トライアルコース+精神障害者トライアルコースになっています。
各コースの特徴は、上の図のようになっていて、基本のトライアル雇用の期間は3か月です。
給料は企業の判断によりますが、各都道府県の最低賃金がベースになっています。
助成金は、基本月額最大4万円ですが、障害によって障害特性の配慮があり、トライアル雇用の期間が延長されたり、短時間トライアル雇用の配慮がされています。
また、助成金の拡充(月額最大8万円と3か月延長)が精神障害者のトライアル雇用や短時間トライアル雇用に見受けられるます。
これは、障害者が無理のない環境で仕事と職場に慣れていく配慮でもあり、雇用をしようとしている企業への配慮でもあります。
申し込みと同時に面接になります。
トライアル雇用のメリット
障害者トライアル雇用は、障害者にとっても、企業にとってもトライアルです。そのトライアルを通して、お互いにどんなメリットがあるのか調べました。
『障害者のメリット』
-トライアル雇用前の障害者の不安-
- 経験のない仕事で不安だ
- 今までの経験は役に立たない
- 人間関係の不安
-トライアル雇用中のメリット-
- 社風を感じる
- 苦手な事を伝える
- 必要な配慮を伝える
-トライアル雇用後のメリット-
- 好感が持てた
- 廻りとうまく行けそうだ
- 通勤も心配なさそうだ
『企業のメリット』
-トライアル雇用前の企業の不安-
- 何ができるのか
- どんな配慮が必要なの?
- 接し方がわからない
-トライアル雇用中のメリット-
- 違いはないと知った
- 障害の理解と配慮がわかる
- 特別でないことがわかった
-トライアル雇用後のメリット-
- 配慮が分かった
- 向いている仕事が分かった
- 接し方がわかった
障害者トライアル雇用は誰でも挑戦できる?
障害者トライアル雇用について厚生労働省は対象者を明記しています。
『障害者トライアル雇用対象者』
① これまでに働いたことのない職業に挑戦してみたい方
紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望していること② 離転職を繰り返し、長く働き続けられる職場を探している方
紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返していること③働いていない期間がしばらくあったが、再び就職しようと考えている方
紹介日の前日時点で離職期間が6か月を超えていること④ 重度身体障害、重度知的障害、精神障害のうちいずれかのある方
(④の方は、①~③の要件に関わらず、障害者トライアル雇用の対象になります。)※出典:厚生労働省
トライアル雇用の社会保険と雇用保険
まず最初に、社会保険は病院に持っていく時などに使う健康保険と年金を受給するための厚生年金保険の両方をさします。
雇用保険は、簡単に言うと失業した時にハローワークで申請して受給する時に必要な保険です。
- 社会保険(健康保険・厚生年金)
- 雇用保険
障害者は、トライアル雇用の時も定期通院が必要であったり、体調を崩して通院をするかもしれません。また、歯が痛くなったり、時期によっては花粉症などで通院が必要なることも十分想定されます。このように、いつ健康保険証が必要になるかわかりません。
いまトライアル雇用を検討されている方は、国民健康保険に加入していたり、家族の扶養家族として社会保険に加入をしていると思いますので無加入はあり得ません。
それでは障害者のトライアル雇用が始まればどうすればよいのでしょうか。どのタイミングで切り替えが必要になってくるのでしょうか。
それは、障害者トライアル雇用の期間と労働時間によって変わります。
トライアル雇用の気になる社会保険加入は
厚生労働省では社会保険加入の条件として以下を定めています。
- 雇用の見込みが2ヶ月以上ある
- 労働時間が正社員の4分の3以上ある
障害者トライアル雇用の場合
障害者トライアル雇用は原則3ケ月となっています。
これに社会保険加入条件をあてはめると、雇用期間は原則3か月となるので、正社員の4分の3以上の労働時間で働く場合は、社会保険加入となります。
精神障害者トライアル雇用の場合い
精神障害者トライアル雇用は原則6ケ月から最長12ケ月です。
この場合も、社会保険加入条件をあてはめると、雇用期間は原則6か月となるので、正社員の4分の3以上の労働時間で働く場合は、社会保険加入となります。
障害者短時間トライアル雇用の場合
これは、障害者と精神障害の両方が含まれます。
まず、平成28年10月に法改正があり、短時間労働者(パート含む)であっても一定の条件を見た満たすことで社会保険に加入することになりましたので、以前の知識のままの方はインプットしなおしておいてください。
短時間労働者の定義は、1週間の労働時間が30時間を下回る場合、短時間労働者とされます。
ここ大事です。
平成28年の10月の法改正では
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 1年以上継続して雇用されることが見込まれること
- 月額賃金が8万8千円以上であること
- 学生でないこと
- 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること
*(平成29年4月1日から被保険者が常時 500 人以下の事業所も下記の場合適用になりました。
- 労使合意(働いている方々の2分の1以上と事業主が社会保険に加入することについて合意すること)に基づき申出をする法人・個人の事業所
- 地方公共団体に属する事業所)
となりました。
厚生労働省では障害者短時間トライアル雇用の期間は、3ケ月から12ケ月を実施することとしてあります。
また、雇入れ時の週の所定労働時間を10時間以上20時間未満とし、障害者の職場適応状況や体調等に応じて、同期間中にこれを20時間以上とすることを目指す。ともなっています。
これを基に社会保険加入を考えると、
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること・・・可能性あり△
- 1年以上継続して雇用されることが見込まれること・・・トライアルが1年未満なので×
- 月額賃金が8万8千円以上であること・・・トライアルは最低賃金に近いので短時間労働では△
- 学生でないこと・・・学生ではない〇
- 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること・・・可能性あり△
結果から見ると、短時間労者の社会保険加入には上の条件5つをクリアしなければ加入できないので加入は難しいと言えます。
なので、障害者と精神障害者を対象としたトライアル雇用では社会保険は加入できますが、障害者短時間トライアルでは、社会保険の加入は難しいと言えます。
もちろん、短時間のトライアル中に1週間の就業時間が30時間以上に増えたり、継続雇用が決まり条件が合えば社会保険に加入が出来ます。
国でせっかくトライアル雇用の助成金を作り、企業が雇用する機会を作ったのなら、全てのトライアル雇用を利用する人が社会保険も利用できるようにすればいいのに。
トライアル雇用の気になる雇用保険は
雇用保険は雇用が決まれば期間に関係なく入らなければなりません。
社会保険と雇用保険のまとめ
ここのまとめ障害者トライアル雇用は3コース
- 身体障害者・知的障害者対象のコース・・・原則3か月
- 精神障害者対象のコース・・・原則6か月 最長12か月
- 短時間労働対象・・・3か月から12か月
保険加入のまとめ
- 社会保険は障害者短時間トライアル雇用以外は加入できる
- 雇用保険は加入
この他にも企業が障害者トライアル雇用を実施するのには、いろいろな条件があります。気になる方は厚生労働省のサイトを確認してみてください。
*厚生労働省:障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース 助成内容
トライアル雇用を目標にしたら失敗(デメリット)
トライアル雇用は、就業する前のお試しの用なもので、障害者も企業もメリットがあります。
ですが、自分に合った良い企業をを探そうとトライアル雇用ばかりを続けるのは失敗が見えます。
昔と現代の障害者雇用の変化
10年ほど前はトライアルやインターンと言って企業が障害者を受け入れる事はまずありませんでした。理由は通勤の途中で何かあったら誰が責任を取るのかとか、任せられる仕事ってあるの?などと偏見が多く、受け入れは難しかったのです。
ですが、個人や企業が障害者と障害を知る機会が増えるにつれて、障害を理解している企業も増え、厚生労働省もトライアル雇用やインターンといった受け入れ体制に力を入れることで、最近は以前に比べて比較的障害者の雇用が進めやすくなってきてはいます。
ですが一方、行き過ぎのところも感じています。障害者雇用率の引き上げや条件の改正によって、大企業から中小企業まで、雇用を進めるなかで障害者の人出不足なっています。すると、今度は障害者のトライアル雇用が進み始め、さらにトライアルでも引き入れ合戦になってしまっています。
そうなると、より条件の良いところがないか障害者も探し出します。雇用後に定着しないのも、そのような背景があります。
良い企業の採用枠は早く埋まっていきますので、障害者はトライアル雇用をはしごするより、何社か決めて企業研究もしてトライアルをするのが一番良いのですが、その企業研究が難しいのも理解できます。
トライアル雇用を続けると就活が失敗する理由
この前で書いたように、障害者の転職マーケットはすごく売り手市場になっています。次から次へと求人案が出てきて、人材確保が出来ないとなると、企業は条件を良くしてきます。
こんなケースがありました。
その障害者は何社かトライアルで体験をしましたが、結局は最初のトライアル雇用を実施した企業が一番よく、継続雇用の話が出た担当者に入社が出来ないか相談をしました。しかし、時はすでに遅し、その時は既に他のトライアル雇用を実施した方に採用が決まっていました。
今は数多い求人案があるので、実際一度に何社もオファーをもらう方もいるようです。
入社したい企業をしっかり選ばないと駄目だとは思いますが、選びすぎてオファーへの返答までに時間が長くあいたり、一度断ってしまうのは良くありません。
企業も採用を急いでいるので、トライアル雇用を実施し、アピールしています。一度断られたり、返事がないのは、あきらめて次の候補者に行ってしまいます。
でも勘違いしないでください。色々とトライアル雇用を体験しては駄目だとか、企業に遠慮して折れろとか言っているのではありません。
良い条件のところに転職出来るのであれば、トライアルを数試すのはいいのでは?と思う方もいると思います。実際はそれで良いのかもしれません。それで、自分が納得いく就職に繋げれらたのなら成功なのかもしれません。
ですが、やっぱり私はトライアル雇用のはしごはお勧めできません。しっかりと企業研究もしながら、トライアルをしたい企業を数社に絞って実施する事をお勧めします。
トライアル中のちょっとしたアドバイス
トライアル雇用は自分のキャリアパスを考える上で、必要で重要なプロセスの一つと考えます。企業研究や面接時の質問から想定される想像や妄想ではなく、実体験でその企業を感じられるのと、普段では話が聞けない先輩社員との話などです。そこには障害をもつ先輩社員もいるかもしれません。
このような宝のような体験はトライアル雇用でしかできないと思います。長く勤めている障害のある先輩社員がいる場合は、その企業は多様性があり成熟しているのかもしれません。自分が働く場所なのでじっくりと色々な人と会話をして情報を集めましょう。
また、どの企業のトライアル雇用も担当責任者がいてトライアル中に面談を行います。それは、お互いに歩み寄るためです。その時は、先輩社員から得た情報を基に色々と質問をすると良いでしょう。
こんな事聞いて良いのかなとか、聞きにくいなという事を企業の担当者は聞かれるのを待っています。
それはお互いに知らないのだから、知り合う為に必要な事だからです。是非、障害者トライアル雇用を実施して成功してください。
まとめ
トライアル雇用を申し込むためには、ハローワークを通じて企業に申し込みをする必要があります。
地方にお住まいの方は、トライアル雇用を利用して仕事の多い所へ転居するのもひとつの手だと思います。
ここだいじ
- 障害者トライアル雇用の期間は基本3か月、精神障害者は6ケ月
- 障害者短時間トライアル雇用は基本3か月から12ケ月
- 障害者トライアル雇用の社会保険は短時間トライアル以外は加入
- 障害者トライアル雇用の雇用保険は即加入
そういう企業は、国の雇用率アップの政策に関わらず、障害者の採用を本気に熱心に取り組んでいる企業が多いです。
個人で多くの企業を知らべるのはとても大変です。
でも、転職エージェントなら各企業の採用情報をもっているので聞いて見ると良いでしょう。
ランスタッド公式サイト
https://www.randstad.co.jp/
『対応エリア:全国』外資系のグローバル企業です。精神保健福祉士が常駐しているカウンセリングが好評で、正社員・キャリアアップへの提案力があります。配慮のある環境でキャリアデザインをするのに最適です。
dodaチャレンジ公式サイト
https://doda.jp/challenge/
『対応エリア:全国』パーソルグループの特例子会社パーソルチャレンジが運営元です。自社が特例子会社だからこそ、障害のある人に寄り添った提案が出来ます。グループの保有する企業情報からの提案力はパワーがあります。
アットジーピー公式サイト
https://www.atgp.jp/
『対応エリア:全国』求人案件数が多く、業界では1-2位を競います。首都圏のみだけではなく地方の求人にも強くUターンやIターンで仕事を探す時に提案力があります。